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「さーおやあー さおだけえーえー」 夏の暑い日 日曜日の午後 部屋の掃除を終え コーヒーを入れたところだった 普段は 洗濯物を部屋の中に干しっぱなしにしている僕だが 事情があって 最近 物干し竿の必要を感じていた 僕は 拡声器から流れてくる 録音された女性の声に 耳を傾けた 「二本で千円 二本で千円・・・」 その値段を聞いて 僕は部屋を飛び出した 軽トラックに積まれている竿は どれも長かった 販売している男に計ってもらったところ 二メートル五〇が 僕の住むアパートのベランダの幅だった 「大丈夫 いくらにでも切れるから」 男はそう言った 「じゃ 二本で千円のを」 僕がそう言うと 男は次のように言った 「これは 細くて切れないんだ」 確かに それは細く 男が持っている専用のカッターでは 物理的に切ることの出来ない事は 僕にも分かった あらかじめ用意していない そう言った方が適切なのかも知れない 次に安かったのは 一本が二千円 値段は一気に四倍に跳ね上がったが 仕様がない 「やっぱり二本はいるでしょう」 男は言う 「いや 一本でいい」 僕は 一本二千円もの竿をやり投げの槍のように持ち 二階にある自分の部屋に続く階段を上った 三メートルにも満たない一本の棒が二千円 「これは鉄ですから 必ず錆びます」 男の言葉が耳に残っていた 男は 錆びないという 一本三千円のものをすすめていた 三千円も出すのなら チャリンコをこいで 一〇キロ先まででも 安い竿を買いに行く 「二本で千円」 その餌に食いついた獲物には 一本が二千円 そして三千円 最後には それが二本で束になってかかってくる 「商売」 これは なめてかかると恐ろしいのだ |